primavera
ある晩の、眠りに落ちる瞬間のことだった。
暗闇にマゼンタ、シアン、イエローの光が浮かんだ。
握りこぶしくらいの大きさの、塊。
そいつらが、ふっと、息をするように明滅しながら、約3メートル先の視界を通り過ぎる。
あたしは一体、いま何をみているのだろうか。
片目を閉じる。マゼンタが消える。
両目を閉じる。シアンが消える。
両目を開ける。イエロー一色に視界が染まる。
よく目を懲らすと、それは、春の結晶だった。
私は、世界に、あたたかさが舞い降りた瞬間、をみたのだった。