ユージン・スミス
昔、愛知の写真専門学校では、卒業制作のテーマの中間発表の際に、必ず己のテーマは「念写!」と答える奴が、学年に1人が2人はいたとか、いないとか…。
(※某 Aンドウカメラ・Iさんより聞いた話)
わたしの使っているカメラは、ミノルタのSRT101です。
写真屋時代の先輩のお客さまからの、もらいもの。
学生時代、ガーリーフォトとポラロイドカメラ、そしてトイカメラの流行の只中にいて、
そこからカメラに興味を持ちましたが、
大学はとくに写真学科などあるところでもなく、ごく普通の田舎の文学部のようなもの。
でも、ひとつ運が良かったのは、全国有数の蔵書を持つ図書館があったこと。
その中で、ユージン・スミスの洋書の写真集を見ることができたのは、私の人生のひとつの転換期でした。
水俣病の患者を撮ること、
日本人のふつうの家族を撮ること
そのすべてに、ユージン・スミスの愛や、人としての情を感じるような気がしました。
正義とはなにか。そして、平等とは、自由とは。
美しさ、愛、生きるということ…。
ロバート・キャパのちょっとピンぼけ、も勿論ありましたが、
なぜか、私が惹かれたのは、ユージン・スミスの方でした。
正直私は、他の同業者に比べてカメラやレンズのことに詳しくありません。
くっきりと現実を写したり、スーパーリアリズムを追求するのならば、フィルムカメラは捨て、デジタルカメラに切り替えるべきなことはわかっています。
が、その中でも、「あいまいなもの」「空気」「情」を写すには、まだフィルムの方が優っているのではないかな、と、
やわらかな木漏れ日や、「あわい」の色の写り方を見て、思うのです。
…うん、
私もきっと、卒業制作は、念写って言ったかも、知れないな。
ともあれ、
ユージン・スミスと同じように、
人間的に公平な愛をもって、写真を撮り続けたい。
そう、思います。