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東北、2015年、春。⑤ 陸前小野、「おのくん」

柳津駅からはBRTではなく、鉄道で。
ここから、陸前小野まで向かうと決めていた。

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陸前小野駅ちかくには、有名な仮設住宅がある。
「おのくん」を作るお母さんたちのいる、小野駅前応急仮設住宅
「おのくん」とは、ソックモンキーと呼ばれる、靴下で縫い合わせたぬいぐるみのこと。


正式名称は、「めんどくしぇ おのくん」だ。
名字がめんどくしぇ、名がおのくん。
お母さんたちが手縫いでぬいぐるみを縫い、震災復興に役立てているという。

去年、野蒜から陸前小野まで歩いたにもかかわらず、実はこの「おのくん」のことをまったく知らずに名古屋に帰った私。

翌日、仕事で訪れた地元のイオンモールで「おのくんBOX」を知り、愕然とする。

 

(全国各地のイオンモールで、おのくんを作るのに必要な綿や靴下が集められています。場所によっては終了しているかもしれませんが…)

…ということで、10か月かかってしまったけれど、陸前小野へ。


自然豊か。
少しいけば石巻や仙台、という立地ながら、こじんまりとした町。
が、勿論、陸前小野も被害のある場所。

仮設住宅に向かう前、電車でお話しをさせていただいた方からは、
「うちも車が流されちゃってたんだけれど」
「あー野蒜とか東名もみんな家が流されちゃってひどいところで…」
と、明るいながら、大変な話題が多数。
…名古屋から来た私には圧倒されるばかりなのだけれど、
そんなことばかりだったんだな。

 

 

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「こんにちは、ごめんください」
中で、お母さんたちの声がする。畳のにおい、そしてどこか懐かしいような光。

「はいはい」
しばらくおいて、のれんの向こうからひとり、お母さんが出ていらした。

「どうぞ、お入り下さい」
「こんにちは、おのくんを見させていただいていいですか?」
「どうぞどうぞ」
4人のお母さんたちがおのくんを縫っている。ミシンの音、コーヒーの香り。窓から差し込む陽がとてもあたたかだ。

 

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おのくんは現在、陸前小野駅前応急仮設住宅に来た人だけは、すぐに優先的にお迎えできる形になっている。
が、そうでない場合、今では1年待ち(!)という人気。
愛嬌のある顔。くつしたならではのカラフルさが、とてもかわいい。

「今日は(おのくんが)居る方だねえ。土日に来るともっと少なくて選べないんだけれど」
と、お話しして下さったのは、迎えて下さったおかあさんの、武田さん。
おのくんのリーダーだ。
「だいたい、1体作るのに皆さん、どのくらいの時間がかかるんですか?」
「うーん。小さい子だと、1時間かな。でも、時間のかかる子もいるよ」
「すごい!」
おかあさんたちはその間も、せっせとおのくんを縫っている。
話しながら、おかしをつまみながら、コーヒーを飲みながら。
なんだか、いい空間。

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私は、名古屋から来た旨、「東名」という駅を見て降りて、野蒜、陸前小野を歩いた話、帰った翌日におのくんを知った話をした。
「来週に来たらよかったのに。おのくんを囲んで祭りだったんだよ!」
武田さんは、「めんどくしぇ祭り2015」のパンフレットを渡してくれる。
そうなんですよねー、来たかったんですけれど。

「タイミング合わないねえ~。また、いい時期にきてね!」
「また、絶対きます!」

 

と、いうことで。
私も、「わたしのおのくん」を、お迎え出来ました。
記念に、小野の堤防で、1枚。

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風が気持ちいい。
「このへんも昼はあたたかいかな。でも、3月のほうが暖かかったよ」
「変な気候だね。東京は雪が降ってたよ」


お母さんたちは、せっせとおのくんを縫っている。
仮設住宅で生まれた絆、全国に広がる思い。
5月には、仙石線も繋がる。


陸前小野も、もっと、人が訪れるようになる。
おのくんで生まれた縁や、ひとのあたたかさ、希望が、
もっともっと、町に広がりますように。


※追記※
おのくんは、現在

仮設住宅に行って
②FAX注文
③イベントで

里親になる(手に入れる)ことができます。大きさによらず1体1000円です。

おのくん BORN IN 奥松島