東北、2015年、春。 ⑦福島・花見山
陸前小野を離れた私が次に向かったのは、福島でした。
阿武隈川から。
「福島に行ったよ!」と言うと
「放射能は?」という反応になりますが、
中にはものすごく顔をしかめる方もいらっしゃって、びっくりしました。
福島、というより「FUKUSHIMA」として捉えているのでしょう。
個人的には「福島という場所を、震災前から知らない」人が多いことも、放射能の恐怖を増幅させているのではないかとも思いました。
私が知りたいのは、「いま、ここ」の、本当のこと、でした。
福島に住んでいる人の声。
福島が好きな人の声。
福島に住みながら、放射能の恐怖とたたかう人の声。
福島に住んではいないけれど、真摯に向き合う人の声。
勿論、「好きなもの」だけを集めても健全ではないですが、
実際に見ないと気が済まない。
まずは、福島がどういう場所か、知りたい。
そう思ったきっかけは、
前回訪れた際のパンフレットの写真。
花見山公園。
どうしても、行きたい。
満開の桜を見てみたい。
福島駅から花見山までは、徒歩1時間です。
バスもありますが、10時からしか出ておりません。
そのため、撮影に適した朝の日光の時間帯には、バスは出ておりません。
タクシーを使うことも考えましたが、
1時間、歩くことにしました。
私が到着した日は、福島で桜の開花したと伝えられて3日ほど経っていました。
市内の桜も、7~9分咲き。
花見山に行くまでに見た渡利中学校の桜も、ほぼ満開。
うつくしい、東北の春。
ちなみに、
とてもきれいですが、この道はこれ以上行くと「行き止まり」。
「?」と思いますが、
花見山公園は、個人の私有地なのです。
不思議な気持ちでした。
早足で60分コースを歩きましたが、
ここは、「有名なだれかの設計によるもの」「市が整地した場所」ではない、山です。
鶴の彫像や、太鼓橋、名もない歌人の歌の札が、ところどころに配置されてふしぎな世界観を作る中、
満開の桜や桃、菜の花、クリスマスローズ…等、
数々の花が植えてありました。
「桃源郷」。
それがもしあるのならば、
ひとの手が加えられないものなのかとも思っておりましたが、
これも、かなり、ふしぎ。
何度も、山はだから足を滑らせそうになりましたが、山頂までなんとか登りきって、福島市を一望してから、下山しました。
ちなみに。
平成27年3月現在の花見山周辺の放射線量は、0.23~0.5 μ sv/h未満。
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/uploaded/attachment/41374.pdf
渡利地区は最大値で0.75~1.0 μ sv/h。
私は今回、危険だと思うよりも「見たい」という自分の気持ちを選びました。
覚悟の上です。
これが「見たい人だけが見られる風景」なのは、とても残念でなりません。
放射線が気になる方のためにも除染してほしいと思うし、
何よりも、そこに暮らす人のため、安全な福島になってほしい。
愛おしい、緑豊かなふるさとで暮らせる福島になってほしいと、
心から思いました。