mellow yellow sky

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arcadia

@ 名古屋 Gallery Cafe Chimera
2014 6/24(tue)~7/6(sun) 12:00~21:00

☞ ■DM 詳細■

母方のルーツである東北が様変わりしていった3.11。
「故郷が失われるということ」や、
そして30年近く住んだ「故郷」であるはずの名古屋の風景が変わっていく
(≒失われていっている)こと、

そして「理想の場所」とは何か?
という思いをこめて、作品を制作中。

 

 自分が生まれ育ってきた街に対し、
 ずっと違和感を抱えたまま生きてきました。
「果たして私にとって、ここは、何なんだろう?」

 愛着を抱くこともできず、
 しかし一方で心底から捨てきれなかった、HOME。

2011.3.11 東京
 越してきたばかりのテレビもないマンションの9階で、
 消防署の鳴りやまない批難指示、
 帰り道に見たニュースの津波の映像を思い出しながら
 
 徒歩で帰宅する、列の絶えないサラリーマンの、
 帰宅を待つ家族の、震える子どもたちの、
 見知らぬ多くのひとの無事を祈りました。

「国道6号」。
この道をずっと行けば、福島や宮城、岩手に通じる。
東北。

 私はいま、ここで、何をやっているんだろう。

 その一方で、思いました。
「生きなければ」。


2014 名古屋
 振り返る。ボランティアに行けなかった自分の非力と心のよわさを思う。

「なにか、できたはずだ」。

 カレンダーをみれば腸炎・腎臓結石の文字がある。
 ご丁寧に○で括って。

 自分が足手まといになる可能性がある。
「それでも、なにかできたはずだ」。

 手帳の隅に、自分の字でこう書いてあった。

「誰も意識をしなくなった時に、思いださないことが罪だ」
「そのときに、自分にできることがあるはず。
 未来のあたし、頼んだ。」


2014.4.2 宮城

 東北を訪れたのはこれがはじめてだった。
 朝、6時にでた福島市の太陽は、ひりひりと刺すような陽射しだった。
 空気が、澄んでいる。
 身体の中のなにかが、生き生きと喜んでいた。
「春」。その訪れの1日。

 JR石巻線はまだ復旧していない高城町から矢本駅まで、代替バスに乗る。

「なにもない」。
 田舎だと被災地か「元々なにもない」だけの場所だかわからないな、
 などと冗談をいっていたのだけれど、

 明らかに、自然が切り取ったものだとわかる。

 疲れた(ように見える)地元の方の同乗されたバスの中、
 バスのエンジン音と何十台と動くブルトーザー、
 けたたましい工事の音、
 それさえも無音に聞こえる。

(これから生まれる音。これから作り出す音)

 小高い場所に、墓がある。
 そこだけ大事に、人々の日々の生活を見守るように。
 津波で傷つかずに、残っていた。

 写真を撮ることができなかった。
「撮ってはいけない」だれかがそう言った気がした。
 涙が止まらなくなった。


「なにも復興なんて、していないじゃないか」


 ごめんなさい、

 だれにともなく謝った。

 神様がいるのだとしたら、
 なぜ、この場所が、傷つかなくてはならなかったのか

 なぜ?


 答えのない問い。


 やがてバスは矢本に着く。


 ブルーインパルスが、
 雲一つない空に、真一文字を描いていた。

 


2014.4.3
帰りの電車で、隣に立った男性の鞄に書いてある「ことば」が目に留った。

"LOVE LIGHTS THE WORLD"

私は、愛は地球を救わないと思う。
愛ができることといえば、
一瞬だけでも、だれかのこころを照らすこと。

だれかの想いが、常に、世の中を動かしてきた。
高層ビル、鉄道、春の夜の電灯。


ひとの想いは、うつくしい。

やさしさで世界が満ちるといいな。
あなたがしあわせでありますように、

 何年、何十年経つかは分からない
 それでも東北は復興するだろう

 ただしそれは、「国」ではなく
 「人」の力で。

希望は、作るしかない

東京でなくてもいい、
大都市でなくてもいい

理想の場所があるなら、それを作るのも、
自分の手で、

できる

 そう思うのです。

ー  2014.6.2    ayako nakamura